自然淘汰が作った人間の本能

動物は、行動しなければ死んでしまう。

動物は、生きて行くために必要な行動をするように本能を身に付けた。


自然淘汰

生き物は、突然変異で遺伝子が変化し、性質の違う者が生まれる。

性質の違う者の中で、生き残れる者が生き残り、生き残れない者が消えていく。


人間などの動物は、感じることで行動する。

お腹が空けば、食べる。

暑ければ、木陰に入る

眠ければ、眠る。

怖ければ、逃げる。


遺伝子が変化することで、感じ方が違ってくる。

感じ方が違うことで、行動が違ってくる。

行動が違うことで、生き残る者と消えていく者に分かれる。


生き残った人たちは、生き残るような行動をするように本能(感じる)を身に付けたと言うことになる。


暗闇への恐れ

真夜中に、暗闇の中、ひとけの無い所へ一人で行くのは怖い。


昔、人間の天敵だったヒョウは、夜行性で夜に狩をしていた。

夜の暗闇を怖いと感じる者は、夜は安全な所でじっとしていた。

夜の暗闇を怖いと感じない者は、夜に出歩き、ヒョウに襲われて死んでいった。


夜の暗闇を怖いと感じる本能を身に付けた者が、生き残ってきた。


美味しいと楽しい

人間は、“空腹”を感じて、たんぱく質、脂質、炭水化物などを得ようとする。

体に必要な物は、“美味しい”と感じ、不要な物は、“まずい”と感じる。

最初は美味しかった物でも、同じものを食べ続けると栄養が偏り体に良くないため、“飽き”を感じて食べるのをやめる。

本能で、空腹・美味しい・まずい・飽きを感じて行動している。


人間は、“退屈”を感じて、知識、経験、機会などを得ようとする。

役に立ちそうな物は、“楽しい”と感じ、役に立たない物は、“つまらない”と感じる。

最初は楽しかった事でも繰り返しやると、新たに得る物がなくなるため、“飽き”を感じてやめる。

本能で、退屈・楽しい・つまらない・飽きを感じて行動している。


「動物は本能で動いているが、人間は人生を楽しんでいる。」と言う人がいる。

しかし、楽しんでいる行為も、本能で動いている事になる。


後悔と悲しい

まずい事をすると、後悔する。

後悔は、同じ過ちを繰り返さないようにする本能だと考えられる。


子供が死ぬと、親は悲しむ。

悲しいは、同じ悲劇を繰り返さないようにする本能だと考えられる。


長男がバイク事故で死んで、親は悲しいと感じる。

しばらくして、次男が「バイクを買って」とせがんだ時、長男の死で悲しいと感じた親は、拒んだり、長男の時とは違う対応をする。

同じ悲劇を繰り返さないようにする本能が、そういう行動をさせる。


また、事件や事故で死んだ人の遺族が、マスコミのインタビューで「こうした事が二度と起こらないように・・・」と言うのは、

この本能によるものと考えられる。


一番大切なもの

「一番大切なものは何ですか?」の質問に多くの人が、命や家族(恋人)などを答える。

人が、命や家族を大切だと考えるのは、命や家族を守ろうとする本能を持っているからだ。

多くの動物は命を守ろうとするし、子育てする動物は子供を守ろうとする本能を持っている。


知能は、知識や経験をもとに因果関係を理解する。

戦争では人が死ぬ。そうした知識や経験から、人は、命や家族を守るには平和が大切だと考える。

また、自分や家族が生きていくのに必要な物をお金で買えることから、お金が大切だと考える。

人間は、本能または本能と関係ある物の価値を理解する。

最近、人が環境を大切だと考えるようになったのも、命や家族(子孫)を守るには環境を守ることが必要であることを分かったからだ。

人間は、知能が因果関係を理解し、多くのものに価値を見出してきたが、その根本には本能があり、

実質は本能しか価値が理解できない。


いじめ

時々、突然変異で色の違う者が生まれる。オオカミやサルなどは、色の違う者を大勢でいじめる。


保護色の動物が集団で狩をする時は、獲物に気付かれずにどこまで近づけるかが重要になる。

しかし、集団の中に色の違う者がいた場合、獲物に気付かれ狩が失敗する。

保護色の動物の群れの中に色の違う者がいることは、群れにとって死活問題になる。

群れを作る動物は、望ましくない者を攻撃し、群れから追い出そうとする本能を身に付けた。


人間も群れを作る動物として、望ましくない者を排除しようとする本能を身に付けた。

自分勝手な人や犯罪者などに怒りを感じるのは、この本能の一つと考えられる。

人間は、怒りや嫌いなどを感じ、村八分、集団リンチ、差別、いじめ、民族浄化などを行ってきた。

ヒトラーやナチスが、特定の民族や障害者を排除しようとしたのも、この本能が関係していたと考えられる。


ストーカー

オスが一生に出会うメスの数が重要になる。


出会うメスの数が1匹の動物の場合

オスがメスに求愛し、メスに断られた時、あきらめてしまうオスは、子孫を残せない。

メスに断られても、メスが受け入れるまであきらめないオスが子孫を残せる。

ほとんどのオスが、あきらめない本能を身に付けることになる。


出会うメスの数が複数の動物の場合

オスがメスに求愛し、メスに断られた時、あきらめても、別のメスを得て子孫を残せる。

出会うメスの数が多い動物ほど、あきらめるオスの生き残る可能性は高くなり、

あきらめるオスの割合は増え、あきらめないオスの割合は減る。


人間には、あきらめない本能を持つ人(しつこい人)が少しいて、ストーカーなどの行為に関係している。


古い本能の間違い

前に、コンピューターの2000年問題があった。

古いプログラムは西暦を下2桁で表現していたため、1900年と2000年を間違えてしまう。

ある環境を想定して作られたプログラムは、環境が変わると間違った処理をしてしまう。

これは、自然淘汰が作る動物の本能と似ている。


ウミガメは、クラゲを好んで食べる。

ウミガメは、人間が捨てたビニールを食べ、体内に詰らせて死んでしまう。

ウミガメの本能は、クラゲとビニールを間違えてしまう。


ワニは、爬虫類では珍しく子育てをする。

ワニの本能は、子ワニの鳴き声に反応して子ワニを認識する。

ラジカセに子ワニの鳴き声を入れておくと、親ワニはラジカセの世話をする。

ワニの本能は、子ワニとラジカセを間違えてしまう。


ある環境の下に作られた本能は、環境が変わると間違った行動をしてしまう。

本能で行動する人間についても同じ事が言える。


人間は、自分の子供を“かわいい”と感じる。

かわいい”は、子育てに関係する本能だと考えられる。

子育てに深く関わってきた女の方が男よりこの本能が発達している。


人間は、当初、番犬や穀物を食い荒らすネズミ退治などの理由でイヌやネコを飼いはじめた。

近年ペット産業が発展し、人気のある“かわいい”イヌやネコを創ってきた。

人間の本能は、見た目や仕草に反応して“かわいい”と感じる。

人間が、自分の子供だけでなく、ペットを“かわいい”と感じてしまうのは、

人間の本能が、子供とペットを間違えていることを意味している。


ペットに服を着せたり、ペットの誕生日にケーキを買って祝っている人がいる。

この様な人たちは、本能が子供とペットを間違え、子供にする行為をペットにしていると考えられる。

ペットの世話をする人間は、ラジカセの世話をするワニと同じ間違いをしている。



人間は本能、怒り、嫌い、楽しい、悲しい、寂しい、嬉しい、つまらない、恨み、憎しみ、可愛い、好き、美味しい、

不味い、綺麗、汚い、可笑しい、不安、不満、怖い、辛い、後悔、快感、欲しい、恥ずかしい、罪悪感、責任感、・・・

などを感じ、行動している。


人間の本能は、だいぶ前に身に付けたものであり、古い環境に合わせて作られている。

古い本能は、その本能が作られた古い環境の中で正しく行動するように出来ている。

近年、環境が大きく変化したが、古い本能は新しい環境に対応できず、人間に間違った行動をさせる。


人間は、恨みや憎しみなど、人を殺すような本能を身に付けている。

本能は、人が逆らえないような強さで人を動かしている。

古い本能が間違えて反応することで、間違った人殺し、間違ったいじめ、間違った虐待などがたくさん行われている。


まとめ

本能についての知識を持たずに本能で動いている人は、

「命や家族が大切だ。」と考え、本能しか価値が理解できない。

そして、古い本能に間違いがあっても、その間違いを自分で理解できず、間違ったまま本能で動いている。


多くの人が本能について理解し、本能を超えた思考ができるようになることが大切だと思う。